API3はChainlinkキラーか?/ L2資産が担保の融資 Liquid L2

#152 Bspeak! 2020年11月16日号

1.API3 Closes Seed Round With Six Major Funds

分散型APIのネットワークを開発している『API3』が、$3Mドルのシード資金を調達しました。Placeholder Capitalが主導し、Accomplice、CoinFund、Digital Currency Group、Hashed、Pantera Capitalが参加しました。API3トークンをこれらファンドに売却し、2年間をかけてべスティング(権利確定)されます。

今後 Mesa DEX を使ったトークンセールが予定されているようですが、まだ時期は発表されていません。9月のブログ記事によると、API3トークンは、分散型自律組織(DAO)とAPI3のネットワークのガバナンスに利用される予定です。

## API3とは

API3が実現したいのは、現状Chainlinkを始めとするオラクルネットワークを介する構造を、より透明かつ公平にするというものです。どういったことか簡単に書いていきます。

 

## Chainlinkモデルの課題

ブロックチェーン内で参照する情報(例えば価格情報など)は、オラクルノードを介して外部の情報を取得しています。もっともよく知られているのが、Chainlinkです。

Chainlinkネットワークの現状の課題として、ガバナンスが不透明であること、結果としてデータの転売などが起きていると言われています。どのノードがどのデータフィードを提供するか、どのノードがどのAPIからデータを提供するかを、集権的に決定しています。

このような形態をとっているため、Chainlinkネットワークの利益は大きいが、データの元であるAPI提供側にはほとんど利益が渡っていない、という現状があります。

実際に最近のDeFiブーム(8-10月)では、上位のChainlinkノードが収益を大きく上げていて、1ヶ月でChainLayerは $322,000ドル以上、LinkPoolは $306,000ドル以上、CertusOneは $293,000ドル以上、Fiewsは $282,000ドル以上を稼いでいました(The Block)。一方データ元であるAPIプロバイダーは、Chainlinkのノードから払われる料金は少なく(数百ドル程度)、かつ自分たちのデータが転売されていることも把握できていません。

API3創業者はChainlink初期のノード運用者で、上記のような不透明なガバナンスを感じていたそうです。

 

## API3の案

そこでAPI3では、より良いネットワーク構造として、Chainlinkのようなオラクルネットワークを介さずに、APIプロバイダー自身が独自のノード(Airnodeと呼ばれるノード)を簡単に運営できるようにすることを提案しています。そうすることで、データのキュレーションを管理するプロセスを透明かつ分散化した方法で実施されます。

このAPI3のノードであるAirnodeは、InfruとAWSの無料版を使って十分に動かせるので、実質コストもかからないと言われています。

私の解釈をイメージにすると、

 

(a) Chainlink等のオラクルネットワークのモデル

API提供側 → Chainlink等のネットワーク → ブロックチェーン/プロトコル

 

(b) API3モデル

API提供側 (+API3のAirnode利用) → ブロックチェーン/プロトコル

 

という仲介者の少ない構造にしたいのがAPI3となります。

画像: Whitepaper

そうはいってもまたChainlinkなどのオラクルモデルの利点もあります。データ提供側が既存APIをそのままで、追加のソフトウェアを実行することなく、複数のブロックチェーンにデータを販売できる点です。また分散化と改善を今後も続けていくはずです。

Coindeskの記事では、API3を「Chainlinkキラー」と呼称していますが、これに対してAPI3はブログ記事「Is API3 the ‘Chainlink Killer’?」を出し、「キラーという言い方は正しくなく、異なる課題に異なるアプローチで解決しようとしている」としています。

 

2.ETHOnline: A month of Ethereum. A hackathon and weekly Summits

先月1ヶ月間、ETHOnlineというオンラインのハッカソンが行われました。このハッカソンのファイナリストに残ったプロジェクトの中で、個人的に面白いと思ったのが Liquid L2 です。

最近このメルマガでもレイヤー2の話題はよく出てきますし、開発界隈でも最も重要視されている領域ですが、まだ課題があります。 

特に、L2を使ったアプリを使うと分かりますが、セカンドレイヤーのチェーンからEthereumのメインネットへの引き出しに時間がかかります。例えば、Matic Networkでは30分程度、Optimistic Rollupで数日かかる場合があります。

そこで Liquid L2 では、ユーザが少しの手数料を払うことで、すぐにL1の資産を取り戻せることを目指しています。

仕組みとしては、引き出しの際にAaveの信用委任(クレジット・デリゲーション)のVaultを利用し、「委任引き出し」という形で、L1上で資産を取り戻します。

プロセスとしては:

  1. ユーザーが、L2プロトコル上で引き出し処理を開始すると同時に、Vaultが作成される

  2. 貸し手は、このVaultにクレジットを委任され、ユーザーはL1上で資産にアクセスできる

  3. 時間が立ってL2からL1への引き出しが完了すると、Vaultがローンを自動返済する

となります。L2チェーンからの保留中の引き出しを担保とした融資をユーザーが受けられるようにすることで、今後、障壁になるであろうL2利用時の課題に対応できます。ちなみにこちらからデモ動画を見ることができます。

 

3.sOIL and iOIL now live on Synthetix, Powered by Chainlink

Brent Crude Futures (ブレント原油先物)がSynthetixで取り扱われるようになったため、合成石油(sOIL)トークンが稼働し、DeFiで石油市場での取引ができるようになりました。sOILがロングポジション、iOILがショートポジションを表します。

原資産となるブレント原油先物契約は、北海で発見された石油の先物価格を追跡し、ヨーロッパの石油のスポット価格を決めるのに参照されます。今回のそのブレント原油先物の価格データを、インターコンチネンタル取引所(ICE)から取得し、ChainlinkのネットワークがそのデータをSynthetixへ提供することで実現しています。

DeFiで実世界の資産への投資機会をつくるために色々とテストがされています。例えば鉄道の請求書や、音楽のロイヤリティをDAIの担保に追加するなどの議論もありますし、AaveとRealTが住宅ローンのトークン化に取り組んでいたりもします。

また合成資産の話題でいうと、まもなくUMAから『uGASトークン』が発行される発表がありました。Ethereum上のGas価格に連動するため、Gas価格の変動に対してヘッジや投機が可能になります。

またUMAはこれまで流動性マイニングを実施していましたが、開発者マイニングというイベントがシフトしました。これはUMA Protocolを使った開発者に報酬を与え、かつそれらの開発者が流動性マイニングを開催できるというキャンペーンです。合成資産の領域はDeFiの中でも今後の大きな話題となるはずなので、ぜひ調べてしてみてください。

 

4.LiquidStake

DARMA Capitalが支援し、LiquidStakeというサービスがローンチされました。以前書いたLidoと同じで、ETH2.0のステーキングの障壁を下げることを目的としています。LiquidStakeでは特に、ETH2.0へのステーク時に流動性がなくなる課題に取り組みます。

簡単に言えばレンディング+ステーキングのプラットフォームになっていて、Eth2にステーキングした人が、ステーク報酬を得ながら、ETHを担保にUSDCのローンを借りることができます。また他の自分でノード運用をしないで済むため、既存のステーキングサービス+レンディング、というイメージです。32ETHという最低ETH量の制約もなく、Bison Trails、ConsenSys Codefi、Figmentなどのステーキング事業者から、ユーザーが選び、ETHをステークします。

 

5.Andreesen Horowitz-backed Deel launches crypto payroll tool

給与計算プラットフォームのDeelが、暗号通貨での支払いを発表しました。

Deelは、給与の計算とコンプライアンスに必要な処理を行い、リモートワークをサポートするサービスですが、今回の新しいツールにより、国をまたいでリモートで働く人たちがBTC, ETH, XRPで支払いを受けることができるようになります。Coinbaseと提携してこの製品を提供しているため、利用するにはCoinbaseのアカウントが必要となります。

海外送金手数料を抑えるだけでなく、即時に支払いを受けることができることがメリットと言えます。ツールの拡充と人々の意識の変化によって、リモートワークも増えていくはずですから、そこに暗号通貨が利用されることは自然と言えます。

このDeelは、2020年5月にa16zなどから$14MドルをシリーズAで調達し、わずか5カ月後の先月にSpark Capitalなどから$30MのシリーズBを調達しています。

 

6.So you want to use a price oracle

ちょうど今週号は、API3とChainlink、またsOILなどで、オラクルの話題が複数登場しましたが、オラクルについて知っておきたい内容が説明されている記事が出ました。ホワイトハッカーとして、多くのDeFiプロトコルを救ってきたSam Czsunによる記事で、価格オラクルの操作方法、これまでの攻撃をすべて説明しています。

前置きとして、価格オラクルの操作を、現実生活の例え話で挙げられているのが、以下です:

『バンドに会うためにコンサートの楽屋に行きたいと思っていた人が、楽屋の警備員に会う直前にウィキペディアページを書き換え、「そのバンドメンバーの家族である」と警備員に説明し、中に入った(結果としてビールを一緒に飲んだ)。』

また、価格が常に変動するUniswapで、価格を操作している人たちがいることを説明しています。彼は、「DEXから価格をリアルタイムで正確に参照しようとするのは、体重計の針が落ち着く前に、重さを読もうとするようなもの」と言っていますが、これはとても良い表現だと思います。

 一部の対策として、Uniswap V2では開発者向けにTWAPオラクルが導入されました。これは時間平均をとって価格を提供するオラクルで、チェーンの混雑がなく長期間に規模が大きいプールであれば、操作攻撃に強いとされています。しかし、市場のボラティリティが高い瞬間には十分に速く反応しない可能性があるため、オンチェーンで、流動性がすでに大きいトークンに対してのみ機能します。

他にも実例がまとめられているので、DeFiの利用の中でどこに攻撃される可能性が理解を深めたい場合に最適な記事と言えます。

 

7.Billionaire Hedge Fund Investor Druckenmiller Says He Owns Bitcoin in CNBC Interview

Bitcoin価格が、3年ぶりに$16000ドルを突破しました。今年だけですでに123%上昇しています。少し今週の強気ニュースを振り返ってみます。

ヘッジファンド投資家スタンリー・ドラッケンミラー氏は、ポートフォリオの一部がBitcoinであることを明らかにしました。ブルームバーグのシニア・コモディティ・ストラテジストのマイク・マクロン氏は、ビットコインが2021年に $20,000ドルを突破する可能性があるとしています。(Bloomberg Strategist Says Bitcoin’s Price is Heading to $20,000 - Decrypt

またPayPalが暗号通貨に対応することは以前発表されましたが、先週、米国のユーザーに対して暗号通貨の機能を開放しました。需要と話題性がPayPalが想定していた以上のものであったらしく、購入制限を1週間あたり $10,000 USから $20,000 USDへを増加させたようです。そして先週から今週にかけてのBitcoinの強気な相場を後押ししています。

 

8.Blockchain analysis startup Chainalysis launches new service for managing seized crypto

ブロックチェーン分析企業のChainalysisが、押収された暗号資産の処理、監視、処分を検討する政府や法機関を対象にした新しいサービスを発表しました。コンサル企業のAsset Realityとの提携により実現しています。

米国連邦保安局などの機関は、押収された暗号資金のオークションを行うことを考慮し、このような製品に関心を示しているようです。最近では2020年2月にUSのMarshal Service(連邦保安官)がオークションを行い、4,000 BTCが落札されています

また最近になって、シルクロードから盗まれたとされる10億ドル以上のビットコインを米国政府が押収した件もあったので、今回のような政府向け製品の需要はまだまだあると言えそうです。


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