Polkadotの「DOTトークン」はどう価値を獲得していくのか

#141 Bspeak! 2020年8月31日号

Polkadotのチェーンの選ばれ方と、DOTトークンの価値の掴み方

PolkadotのネイティブトークンDOTですが、先週初めて送受信が可能になりました。最初のトークンセールから約3年を経て開発され、取引所で扱いが始まり、時価総額はいきなり6位あたりに入りました。

しかし今後「DOTトークン」はどのようにして価値を掴んでいくのでしょうか。

その話の前にPolkadotが何かを少し書く必要があります。

## Polkadotとその利点

Polkadotは異なるブロックチェーン同士をつなげることのできるブロックチェーンです。
Polkadotと同じ基盤プログラム(Substrate)を使って、Polkadotのネットワーク内に入ることができたブロックチェーンは、「パラチェーン」と呼ばれ、お互いに相互運用可能になります。異なるブロックチェーンだとしても、仲介者を通す必要や一回取引所で交換する必要がなく、トークンを送ったり、アプリを使ったりすることができます。

また、相互運用可能という利点に加えて、Polkadotネットワーク全体のセキュリティをシェアできます。これは、シェアードセキュリティと呼ばれています。どういうことかというと、Polkadot に仲間入りしたチェーンを攻撃するには(そして残高や状態を変更するには)Polkadot 全体を攻撃する必要があり、単体チェーンよりも堅牢、ということです。初期のチェーンは、バリデータも少ないし、時価総額も高くないことが普通なので、ハッカーにとって攻撃コストが低いですが、それをPolkadotの傘下入りすることで守ってもらえる、というわけです。

ここで、どのチェーンもPolkadotネットワークに接続され守ってもらえるわけではありません。Polkadotのバリデータが、増え続けるチェーンすべてのトランザクションを検証していて非効率なので、加わりたいチェーンは、選ばれる必要があります。

## パラチェーンを選ぶプロセス

この現状は、パラチェーンの選定について以下の方針をとる予定になっています:

  • 最初は限られた数チェーンがサポートされて、時間とともに増えていく

  • 誰でも参加できるオークションで、勝ったチェーンが選ばれる

  • 大事な機能を持つチェーンは Web3 Foundation によってピックアップされる

最初にチェーン数を制限するのは、手数料が上がってしまうためで、最適化をしていきながら 1,2 年かけて 50~200 ほどのチェーンをサポートしていく予定となっています。

ちなみに上の「大事な機能を持つチェーン」ですが、以下が決定しています。

  • Ethereum-Polkadotのブリッジ

  • Bitcoin-Polkadotのブリッジ

  • Edgeware (スマートコントラクトのプラットフォーム)

  • その他重要なインフラ(例: DEX やステーブルコイン)

つまり通常のチェーンは今後オークションで選ばれる予定ですが、以下のようにして勝敗が決まります。

## オークションについて

Candle Auction という形をとります。Candle Auction とはいつ終わるのかが分からない方式のオークションで、フロントランなどを防ぎます。このオークションでは DOT トークンをデポジットして参加します。そこで「平均として多くデポジットしたチェーン」が選ばれます。

## 具体例

2年間を4つの期間に分けて、オークション参加者は、どの期間中に Polkadot に接続したいかを選び、またいくら DOT をデポジットするかを決めます。そして『DOT デポジット量 × 期間』 の値が大きい参加者が勝つ仕組みになっています(つまり2年間でDOTのデポジット数を最大化させる仕組みになっています)。

例えば、

  • Charlie が 75 DOT デポジット を 全期間である4期間(24ヶ月)デポジットします。

  • Dave が 100 DOT デポジット を 最後の2期間(12ヶ月)デポジットします。

  • Charlie が 40 DOT デポジット を 最初の2期間(12ヶ月)デポジットします。

すると以下のような結果になります。

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ここで2年間の中で、1期間の平均のデポジット数が一番多いのが Charlie となり、Charlieが選ばれます。DOTの量だけでいうと 100 DOT の Dave が勝ちそうに思えますが、あくまで平均をとります。この例は1人だけが勝つように書いていますが、実際は何個か選ばれ予定です(何個かはまだ決まっていません)。

あまりにも需要が多くなってパラチェーンになりたいチェーンが増えているのに枠が限られている、ということになれば、DOT トークンによるガバナンスで枠を広げることもできるようです。逆に参加するパラチェーンが多すぎる(その結果手数料が高くなりすぎる、使いにくい)などとなれば、枠を狭めることもガバナンスにより可能です。

※ガバナンスとはDOTトークンによる投票です。

また一度パラチェーンになっても期限があり、期限がきれたらまたオークションに参加してステータスを維持する必要があります。もちろん期限がきれたら辞めてもよく、その場合はデポジットしたDOTが返却されます。

## DOTの価値獲得

さて話を戻しますが、上記のプロセスが、今後DOTトークンが価値を獲得していく流れになります。Polkadotのネットワークに参加したいチェーンを増やすことで、購入数およびロック数が高まり価値を獲得する、という構造です。

コアチームとしては、新興チェーンがPolkadot内に参加するには、高くても年間に $100,000 — $200,000 のDOTをデポジットすることで参加できる、という見積もりのようです(もちろん始めのうちはもっと安いです)。

このコストをかけてでも独自チェーンを作ってセキュリティにお金をかけるよりは、「Polkadot のパラチェーンになったほうが経済的、かつインターオペラビリティを持てる」というわけです。

※コストと書きましたが、今のところは支払いではなく、デポジット(ロック)の予定なので、利用をやめたら売り払うことができます

 

■Last Week in Crypto

1.$150 million deal: FTX acquires Blockfolio in bid to expand retail footprint

取引所のFTXが、人気のポートフォリオアプリ「BlockFolio」を$150Mという金額で買収しました。大きな買収額ですが、おそらく「BlockFolioに対してウォレットを追加し、FTXのDEXであるSerumで直接トレードできる」ようにしていくと思います。

ポートフォリオアプリなので、ユーザが価格をチェックした後に、すぐにノンカストディアルに(預ける必要なく)トレードでき、そんなユーザを約600万人一気に獲得できるわけですから、$150Mでも欲しいという判断でしょう。

それにしてもFTXは先週だけでも以下のように物凄いスピードで展開しています:

  • 2020年中はメイカー手数料の無料 (※)

  • 米国の若者を中心に流行り、社会現象にもなっている株取引アプリ「ロビン・フット」の元クリプト部門の責任者をCOOに迎え入れる

  • Uniswapのトップ100の流動性プールのトークン取引ペアに価格連動する「Uniswapインデックスの先物」を追加

  • Blockfolioの買収

※メイカー手数料とは、指値注文をして注文板に注文をおいておき、約定した際にかかる手数料です。反対に注文板から積極的に注文板を約定させたときにかかる手数料をテイカー手数料といいます

ここまで書いた後に、Blockfolioからやはり『Trading』が発表されました。ローンチ自体は今年後半になるようです。

 

2.The new BTC-WBTC 1click conversion

ウォレットのimTokenから1クリックで、BTC <=> WBTC の変換することが可能になりました。BitcoinをEthereum上で使うために、ERC20トークンでラップしたのがこのwBTC(wrapped BTC)ですが、一般ユーザが変換するにはCoinListやWBTC.cafeなどを使うことができます。

今回のimTokenでの変換は、他の手法と比べると、

・KYCが必要なCoinListやFTXのOTCよりも簡単
・KYCはないが、一度申請をして生成されたアドレスにBTCを送るWBTC.cafeよりも簡単

という利点があります。

かつ手数料も、実際に試してみると他の方法と比べると現状で一番安いと思います。これはimTokenウォレットから、彼らのDEXであるTokenlon上でwBTCの発行できるためです。wBTCの普及によって、ビットコイナーがEthereumのDeFiに徐々に参加してきているように思います。

※WBTC.cafeについては6月22日号もご覧ください

 

3.DeFi aggregator Frontier raises $1.85 million in seed funding

分散型金融(DeFi)のアグリゲータである Frontier が、シードで$1.85 Mドルを調達しました。このラウンドには、FTX(Alameda Research)NGC Ventures、CoinGecko、Bitcoin.comのDanish Chaudhry、MaticのSandeep Nailwalなどが参加しています。

Frontierは、異なるブロックチェーンをまたいで、「ステーキングやチェーン間のベストレートのトークン交換、流動性の提供、CDPの作成」などのDeFiアクティビティをまとめるのが目標のプロジェクトです。

現在はUniswap、Aave、Compound、MakerDAO等のDeFiプロトコルをサポートしていて、今後はPolkadot関連や、FTXのDEXである「Serum」のサポートする予定になっています。

FrontierのネイティブトークンFRONTは、トークンモデルシートによると、Ethereum, Binance chain, Solanaで発行される予定で、Serumにも上場されます。

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4.Polkadot-Based Acala Raises $7M as DeFi Grabs Land on Another Blockchain

今週はPolkadotの話題が多いですが、Polkadot関連のプロジェクト「Acala」は$7Mドルの調達しました。Pantera CapitalなどからSAFT(将来トークンを得る権利の売却)で調達しています。

Acalaは、冒頭で書いたPolkadotのネットワークに繋がるチェーン(パラチェーン)になり、カスタマイズされた独自チェーンです。よくPolkadotと対比されるCosmosがありますが、このAcalaはCosmosでいうところのKavaというプロジェクトにあたります。

またAcalaは、CoinList上の「CoinList Seed」に選ばれているため、まもなくトークンセールが発表されると思います。

 

5.Centre Consortium Announces Release of USD Coin Version 2.0 | by CENTRE Consortium

DAIとともにメジャーなステーブルコインとなったUSDCですが、開発元のCoinbaseとCentreが、USDCのバージョン2をリリースしました。

「ガスなし送信」という機能が加わり、USDCを統合するウォレット開発者がガス代の支払いを抽象化することができて、ガス手数料の支払いを別のアドレスに委任することができます。つまりウォレット側がユーザのためにガス代を支払ったり、ユーザがUSDC建てで払ったりすることができます。わざわざEtherを用意しなくて良いという意味で、初心者が参加する障壁を下げるので、とても重要な機能です。

 

6.DeFi project Perpetual Protocol raises $1.8 million in funding round led by Multicoin Capital

台湾が拠点のDeFiプロジェクト、Perpetual Protocolが$1.8 millionドルを調達しました。
Multicoin Capital、Three Arrows Capital、CMS Holding、Alameda Research(FTX)が投資ラウンドに参加し、9月中にもメインネットでローンチ予定です。Perpetual Protocolはその名の通り、 Perpetual先物契約(無期限契約)のための分散型プロトコルで、『Uniswap + BitMEX』のイメージと記事には書かれています。

トークンをロックしてそれを交換に使う普通のAMMではなく、現物のトークンは、交換とは別のコントラクトに保管され、価格発見のために参照されるようです。

 

7.SEC.gov | SEC Modernizes the Accredited Investor Definition

SEC(証券取引委員会)は、”Accredited Investor” つまり「認定投資家」の定義を広げることを発表しました。

歴史的に、所得が年間2000万円や、資産が1億円といった、特定の所得や純資産を満たしていない個人投資家は、「Accredited Investor」ではなく、プライベート市場の投資機会がありませんでした。今回の改正では、知識や専門性をもった機関投資家や個人投資家が認定投資家となるように、定義を更新・改善しています。また、今回の改正では、投資テストを満たしている企業も、認定投資家としての資格を得ることができるようにするなど拡大されています。

 

8.Celo (CELO) is launching on Coinbase Pro

Celoのトークン(CELO)が、Coinbaseで取り扱いがされることが発表されました。以前のメルマガで書いたのですが、Celoは Coinbase Rossetta を共同で開発していて、Coinbase Venturesも投資していたため、ある程度予想できたことかもしれません。

Celoと同様に、Coinbase Rossettaを開発していて、Coinbase Ventures投資先の条件が重なるのは、NEARがあります(まだトークンはメインネットで流通していません)。

またMessariの一覧からCoinbase Ventures投資先を見ることができますが、すでにトークンが流通していて、まだCoinbaseで取り扱われていないのは、UMAとReserve Rightsがあります。このあたりはリストされる可能性があると予想できます。

 

9.DODO Announces Seed Round Led by Framework Ventures, Unveils Long-Term Roadmap

先週、詳細を書いたDODOが、シードラウンドで資金調達を発表しました。Framework VenturesなどのVCに加えて、Compoundの創業者、 Coingeckoの創業者などエンジェルが多い印象です。

同時にロードマップも発表しています。2020 Q3にDODOトークンを発行し、流動性マイニング(ETHなどのトークンを預けて流動性提供した人に報酬としてDODOを配布)を予定しているようです。

その後トークンホルダーによるDAOを組成して、意思決定の権限と収益を分配していくことが読み取れます。公共財としてのプロトコルの所有権を分散させ、そこで生まれる収益をオープンソースのメンテナーとトークンホルダーに分配するという流れは、私の中では定石というか、既定路線になってきました。

オープンソースに貢献するメンテナに収益が行き渡り、継続可能性をもたすというのが、クリプトを革新的にしている1つの側面でもあります。

 


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#140 Bspeak! 2020年8月24日号『DODO』はUniswapキラーとなるか/ NEARのEthereumブリッジの仕組み

#139 Bspeak! 2020年8月17日号 イーロン・マスクが宇宙の金を採掘するが、Bitcoinの供給は変わらない / $YAM 等

#138 Bspeak! 2020年8月10日号 Uniswapはトークン発行するか/NEARのトークンセール 等

#137 Bspeak! 2020年8月3日号 FTXのデリバティブDEX『Serum』発表 等

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