yETHが金利を最大化する仕組み/待望のDeFiの保険

#142 Bspeak! 2020年9月7日号

■Last Week in Crypto

1.Coinbase CEO confirms development of a service for launching tokens

CoinbaseがIEOのようなサービスに取り組んでいることを、CEOのBrian Armstrongがポッドキャストの中で話しました。56:41あたりから話していますが、「トークンを発行し資金調達をしたい」スタートアップ向けで、発行するトークンのカストディや、スマートコントラクトの作成、ガバナンスの対応、コアチーム内への配布などを、Coinbaseが支援するようです。もしこのサービスが立ち上がった場合は、同じくサンフランシスコ拠点のCoinListとほぼ競合となると思います。

Podcast該当部分:

Brian Armstrong: We're working on a product, we'll probably call it Coinbase Launch or something like that, but it's a way for anybody who wants to do a crypto start up to come in and say, "All right, I want to issue a token.
Maybe I want to raise money. Maybe I just want to use it to build my community," and just hand hold people through that process and help them with the custody of it, help them create the smart contract, help them with the governance issues, vesting of these things if you need to distribute those to employees. 

 

2.Yearn.Finance's New Vault Leverages DeFi 'Triforce': ETH, MakerDAO and Curve

Yearn.Financeは最も利回りの高いDeFiプラットフォームにクリプト資産を配分してくれるコントラクトから始まりましたが、今回ETHを担保にする利回りを最大化できる方法(yETH Vault)が追加されました。このスマートコントラクト(yETH Vault)にETHを預けると、MakerDAOにETHを預けてDAIを発行し、そのDAIをYearnのDAI Vaultに預けることで、ステーブルコインの利回りを最大化してくれます。

裏で起こっていることはThe Daily Gweiにて、Anthony Sassanoがよく説明をしています。まとめると:

  • ユーザが yETH vaultに ETH or WETHを預けると、yETH vaultは自動的にMakerDAOのCDP(Vault)に預けます

  • yETH vaultはこのMaker vaultからDAIを借りて(生成して)、200%の担保率にとどまるようにします(ETHの価格が下がった場合に清算されないようにするため)

  • 次にyETH vault はそのDAIを、yDAI vaultに預け入れ、その後ステーブルコインプールである「Curve」のYプールに流動性を追加します(そうすると、yCRVトークンも発行されます)

  • これで、yETH vault は上のYプールから取引手数料を稼ぎ、CRVの報酬を得るために、yCRVトークンをCurve DAOにステークします

  • 定期的に、yETH vaultはCRVトークンをオープンマーケットでETHと交換して売却し、そのETHを yETH vaultに追加することで、yETH保有者のシェアが増加します

この戦略の主なリスクは、ETHの価格下落により、MakerDAO CDP(Vault)が150%以下の担保率になった場合です。これは、yETHのVaultが清算される可能性があり、yETHの保有者が損失を被る可能性があります。この場合、yETH Vaultは、担保率を150%以上に戻すために1時間以内に与えられます。

なぜ1時間の猶予があるかというと、MakerDAOには「Oracle Security Module (OSM)」と呼ばれているシステムが組み込まれていて、DAIを発行したCDP(Vault)の所有者に1時間の返済猶予を与えているからです。例えばETHが突然450ドルから350ドルに下落した場合、Makerオラクルが350ドルに更新する前に、最後のオラクル価格(450ドル)で債務を返済するために1時間の猶予が、yETH Vault(または他のCDP/Vault)に与えられます。

yETH vaultの良いところは、このMakerのOSMに直接アクセスできるので、次のオラクル価格が1時間前にわかることです(MakerDAO側では投票によって承認しています)。

少し長くなりましたが、アーリーアダプターが使いながら課題点を潰していって、yETHなり同様の手法が進化していくと良いと思います。

 

3.Swiss canton Zug to accept bitcoin and ether for tax payment from next year

スイスのツーク州は、来年からBitcoinとEthereumの納税を受け入れることになりました。2021年2月から、企業や個人は、最大10万スイスフラン(約1000万円)の金額まで、この2つの暗号通貨で税金を支払うことができるようになる予定です。スイスのクリプト企業Bitcoin Suisseが、ユーザーの払うBTCとETHをスイスフランに変換することで実現します。今月にも試験的に実施され、税務署に連絡すると支払いに必要なQRコードがメールで送られてくるそうです。

 

4.yearn.finance on Twitter

2週間前のBspeak!でyearn.financeから保険のプロダクトが提案されていることを書きましたが、yInsureという名前で利用できるようになりました。Aave、Balancer、Compound、Curve、Synthetix、yearnに保険(カバーと呼ばれます)をかけることができます。

この保険は、今年の2月にあった「bZxフラッシュローンの攻撃」のようにスマートコントラクトを悪用された際に、ユーザに補償するものです。ユーザーはETH or DAIで保険料を事前に支払い、何か予期せぬ事態が発生した場合に請求を提出できるように、期間と補償額を選択することができます。

## KYCがない

このプロダクトyInsureは、Nexus Mutual を利用しています。Nexus Mutual とは保険プロジェクトで、カバー(保険)を購入するにはKYCを実施してメンバーになる必要があります。1年以上前にこのメルマガで説明していますので、こちらもご覧ください。現在も日本からの利用は制限されています。

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しかし今回のyInsureでは、yEarnコミュニティのメンバーがNexus上でカバーを引き受け、それをNFTとしてトークン化し、NFTトークンを使って他のユーザーにカバーを売る、という方法により、KYCなしで実現されています。つまり誰でもスマートコントラクトのリスクに保険をかけることができるため、DeFiのユーザにとっては大きなメリットとなります。

カバーをかけたい人は、Insure Vaultというプールに流動性提供し、初回手数料(0.1%)+ 週間保険料(0.01%)を払うことで、保険請求の権利を得ることができます。そして誰かが保険請求をすると、流動性を提供している人が投票によって是非を決めます(票数は提供している流動性の大きさに比例します)。また今後は保険が組み込まれたDAIトークンなどといった、保険付きトークンが簡単に購入できるようになります。

DeFiは色々なプロトコルやプログラムの塊を組み合わせて、新しい仕組みを作ることができることから、「マネー・レゴ」と呼ばれることがあります。今回の保険もその好例で、誰でも保険を提供したり購入したりできるようになります。

それにしてもyearn financeの人気はここ数週間で一気に高まっています。これは、コアメンバーや初期投資家に割り当てられることなく、yearnユーザーにフェアにYFIトークンが配られたためです。似たようなトークン配布をするプロジェクトが増えてつつあり、英語圏では「フェア・ローンチ」のプロジェクトと呼ばれることも多くなってきていて、トレンドをかえつつあります。

 

5.Binance Presents Project Token Canal

Binanceの独自チェーンであるBinance Chainがローンチされましたが、その直後にBinanceは、BTC、ETH、XRP、LTC、BCH、ONTなど他のブロックチェーン上で稼働しているトークンにペグするトークンを、Binanceチェーン上で発行しました。別のチェーンのトークンであっても、Binanceがそれらを担保としてロックし裏付けることで、Binanceチェーン側で擬似的にトークンを発行しています。そしてチェーンの差異を意識させない、かつ速い送金が可能になります。

 

6.Kusama: A Lightweight Version of Polkadot

Polkadot関連のKusamaトークンの価格が高騰していました。そこでMessariから、Kusamaを説明する記事が出されていました。この記事では、「Kusamaホルダーに対してDOT総供給の1%がいずれ渡されることが発表されているため、DOTの高騰によりKSMも高騰した」と関連づけています。

しかしPolkadotが過去に出している記事では、「KSMホルダーにDOTの1%を割り当てる」という噂は、Web3.0財団を装ったフィッシングメール/ブログの内容であり、否定しています

そもそもKusamaとは何か、という話ですが、Polkadotのメインネットで動く実験ネットワークで、Polkadotと同じコードを使っています。異なるのは、スラッシュ(バリデータがダウンしてしまったときにステーキングされているトークンが没収されるペナルティ)の値などの各種パラメータがより敷居が低いようになっている点です。つまりPolkadotの機能追加や変更の動作確認をする実験ネットワークであり、ビットコインでいうところのライトコインという位置づけと解釈しています。

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7.Introducing BSwap - Instant Liquidy via Automated Market Maker (AMM) with 0.04% Transaction Fees for the First Month

Binanceは、最近流行りの自動マーケットメーカー(AMM)で交換できるサービスBSwapを開始しました。ユーザーは流動性プールに資金を追加して流動性プロバイダーとなり、手数料を得ることができます。ローンチ時点では、BUSD、DAI、USDTのステーブルコインのペアが利用可能となっています。2020/10/04までは、すべての取引で手数料が0.04%になっていて、その後は0.1%になる予定です。

DeFiプロトコルが先にユーザ獲得をし、Binanceが後追いするような形になっています。しかしBinanceの場合はすでに大きな収益基盤があり、提携先も広いので、様々な形でインセンティブをつけることが可能ではあります。

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8.WorkLock Participation Details

NuCypherというプロジェクトがトークン配布の手法であるWorkLockを開始しました。ETHを6ヶ月間ロックしてNuCypherノードを運用することでトークン配布される配布方法ですが、CoinList代替で行うこともできます。9月28日まで参加することができます(エスクロー期間)。

NuCypher は、プライバシー層のネットワークです。ブロックチェーン上のアプリのミドルウェアとして機能し、チェーン上で暗号化されたデータ共有などをしたい際に利用される予定です。

NUトークンのモデルは、NuCypherノードにNUをステークし、プライバシー関連の役割を果たした場合にユーザが払う手数料を得る、というworkトークンと言われるモデルです。地味ですが、最近流行っているフェアローンチ系のプロジェクトと異なり、3年前から提案されてコツコツ開発しているプロジェクトです。シリコンバレーのインキュベーターであるYcombinator出身で、メインネットのローンチは来月10月を予定しています。

 

9.SEC's Hester Peirce on DeFi: 'I think it's going to challenge the way we regulate'

SEC(証券取引委員会)のHester Peirce氏は、SECがDeFiに注目していると述べ、規制方法は課題になりそうだと答えています。Peirce氏は、DeFi規制がSECの優先事項ではないことを認めていますが、同時にSECは積極的に情報をフォローしていることも認めています。イノベーションの促進と投資家の保護というトレードオフは、DeFiの台頭でより扱いが難しくなりそうです。

 

10.Ethereum miners generated all-time high fee revenue of $17 million yesterday

Ethereumのマイナーの手数料収入が過去最高になったという記事です。色々なプロトコルがイールドファーミングのキャンペーンを開始し、Ethereumのガス代が高騰しているためです。ICOブーム時の2017-2018年の約4倍にもなっています。

ユーザにとっては好ましい状況ではなく、レイヤー1のスケーリング状況を考察する0xのブログ記事では、「このような高額な取引コストで取引して利益を得ることができるのは大口ユーザ(クジラ)だけなので、現時点ではEthereumはお金持ちのための場所になっている」と主張しています。

彼は、セカンドレイヤーは次の投稿で分析するとして、レイヤー1での唯一の解決策は「すべてを解体して一から再構築すること」だと結論づけています。

またVitalik Buterinは、ガス代の課題に対してツイートのスレッドを投稿していて、TetherやGitcoin、その他のアプリによる、ZK-Rollupsへの移行が最良の解決策であることを主張しています。

=以下ツイートから引用=

Vitalik: Conclusion: the only solution to high tx fees is scaling. Tether, Gitcoin and other apps are doing the right thing by migrating to ZK rollups today. I'm excited about the soon-upcoming optimistic rollups that will generalize rollup scaling to full EVM contracts.

ガス高騰の話でいうと、先週書いたPerptual Protocolもメインネットでの稼働タイミングをガス代が落ち着くまで延期しました。現在の環境では、ガス上がっている状態(想定500gwei)になった場合に、ポジションのオープンとクローズで約100ドルもかかってしまうシミュレーションだそうです。ちなみにPerptualのIDO(DEXでトークンを配布すること)は9月7日→9月9日に延期になっています。


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☕ バックナンバー

#141 Bspeak! 2020年8月31日号 Polkadotの「DOTトークン」はどう価値を獲得していくのか

#140 Bspeak! 2020年8月24日号『DODO』はUniswapキラーとなるか/ NEARのEthereumブリッジの仕組み

#139 Bspeak! 2020年8月17日号 イーロン・マスクが宇宙の金を採掘するが、Bitcoinの供給は変わらない / $YAM 等

#138 Bspeak! 2020年8月10日号 Uniswapはトークン発行するか/NEARのトークンセール 等

#137 Bspeak! 2020年8月3日号 FTXのデリバティブDEX『Serum』発表 等

#136 Bspeak! yUSDのリリースと流動性マイニング/ETH2.0のレビュー

#135 Bspeak! Republic上の利益シェアトークン/ CoinList Seedの開始

#134 Bspeak! Coinbaseはトークンを発行するのか/ Anchorによる安定金利の貯蓄DeFi

#133 Bspeak! 2020年 7月6日号 Matchaのローンチ / EIP1559がETHの価値を高める

#132 Bspeak! 2020年6月29日号 Avalancheのトークンセール/ Handshakeドメインを名前解決するブラウザ

#131 Bspeak! 2020年6月22日号 Coinbaseロゼッタ発表のねらい / WBTC Cafeのローンチ

#130 Bspeak! 2020年6月15日号 UMAの合成トークンETHBTCと初の清算

#129 Bspeak! 2020年6月8日号 TokenSetのソーシャルトレーダー/DeversiFi2.0のローンチ

#128 Bspeak! 2020年6月1日号 Libraのマネタイズ/プライムブローカーの競争激化

#127 Bspeak! 2020年5月25日号 BlockFiへの攻撃/Bakktのアップデート

#126 Bspeak! 2020年5月18日号 ETH2.0テストネットSchlesi / PoSの自主規制ガイドライン

#125 Bspeak! 2020年5月11日号 Ethereumキラーの競争/Bittrexの取引所トークン

#124 Bspeak! 2020年5月4日号 ETHステーキングでKEEP報酬/UMAのInitial Uniswap Offereingの結果

#123 Bspeak! 2020年4月27日号 スマートコントラクトで10倍レバレッジのデリバティブを実現するdYdX / Coinbaseが提供するオラクル

#122 Bspeak! 2020年4月20日号 Opynプットオプションの使い方/ Binanceスマートチェーン発表/ Microsponsorsをつかった商取引(Part2)

#121 Bspeak! 2020年4月13日号 Microsponsorsを使った商取引(Part1) / シカゴDeFiアライアンス

#120 Bspeak! 2020年4月6日号 Makerの分散化に向けた最終ステップ

以降もSubstackページからご覧ください。